室町人物伝 足利尊氏 (コミック版日本の歴史)

室町人物伝 足利尊氏 (コミック版日本の歴史) の詳細

室町幕府の初代将軍・足利尊氏の伝記漫画。尊氏は源氏の御曹司ではあったが、生来気弱な性格で優柔不断であったそうである。鎌倉幕府は源氏の正統が絶えて久しく、平家の血を引く北条家が幕府の実権を握っていたのだが、元寇以来その力も衰えていた。討幕を願う後醍醐天皇の命を受けて各地で挙兵するものたちを当初は幕府の命で追討していた尊氏であった。だが、度重なる要請に抗しきれず、遂に尊氏は討幕の兵を挙げる。後醍醐天皇方となった尊氏等の活躍に幕府は遂に滅亡した。しかし、後醍醐天皇による親政では公家や僧に恩賞が厚く武家に薄かった。やがて武士たちの心は天皇を離れていく。そういった不遇な武士たちに領地を分け与えるなどした尊氏は、やがて反天皇の旗頭として期待される。けれど尊氏自身は最後まで天皇に反旗を翻すことを躊躇しており、弟の直義や側近の高師直等に促されてようやく行動する有様であった。この優柔不断さは討幕の際にも見られたことで、尊氏自身は積極的には動いておらず、直義らに担がれての挙兵という側面が強かった。征夷大将軍に任じられ、後醍醐天皇と争うことになった後であっても、後醍醐天皇の死に際して喪に服するなど、最後まで天皇への敬意を失わなかった。むしろ尊氏が自ら積極的に行動しなければならなくなったのは、弟の直義と高師直が争い始めてからの晩年である。直義と敵対することで息子の義詮と共に幕府を守るために争うことになる。が、そういった尊氏と直義の対立以降の話はこの漫画では省略されてしまっているのが残念。